くものうえのハリー
大切なこひつじを亡くしてしまったお母さんは、毎日悲しみにくれていました。そんなお母さんを雲の上から見ていたハリーは、もう一度お母さんにあいたい! と勇気を出して雲の上からおりていきます。
姿は見えなくても、ハリーの気配を感じたお母さんは、ハリーと過ごした日々を思い出します。思い出をたどるうちに、ハリーが与えてくれたのは、悲しみではなく、かけがえのない時間や喜びだったことに、お母さんは気づくのです。
「幸せは、なにげない日常にあるもの」だと気づかせてくれる、大切な人に「ありがとう」と伝えたくなる感動の絵本です。
※本書は、RAM WIRE「僕らの手には何もないけど、」ミュージップビデオを絵本のためにリメイク・描きおろしたものです。
そのころ、ハリーはくものうえから そんなおかあさんを見ていました。ハリーもきゅうにおかあさんから はなれてしまったので、こころぼそい気もちでいっぱいでした。そのうえ、いつもげん気であかるいおかあさんが かなしんでいるのを見ると、いますぐにでも おかあさんのところにとんでいきたくなりました。そうしたらきっと、おかあさんもげん気になるはずだとおもいました。
悲しんでいるお母さんのもとに、ハリーは会いに行こうと決意します。そこで、会いに行くために自分でロープを作るのですが、そのシーンもなんか泣けてしまいます。
ハリーは できあがったロープを いきおいよくおろしました。ロープのさきは もう見えないくらい 下のほうで、ゆらゆらとゆれています。ちょっとこわくなったハリーでしたが、ゆう気を出して、おりはじめました。
ピューンとかぜがふいてきて、ロープがぶらん ぶらんとゆれます。ハリーもいっしょに ぶらん ぶらんとゆれました。もうすこしで からだがふきとびそうになりましたが、ぎゅっと目をつぶり、しっかりとロープをにぎってこらえました。
勇気を出しながら、ハリーがお母さんのために会いに行く姿が。何か胸打たれるものがありますね。
そこに、見はりばんのルシファーがやってきました。もう くものうえにもどらなくてはなりません。ハリーは大きなこえで「おかあさん!おかあさん!」とよびつづけましたが、ついにルシファーにつれもどされてしまいました。
せっかく、お母さんに会えたのに、雲の上に連れ戻されてしまうハリー。
つぎにおもい出したのは、ある あたたかなはるの日のことでした。ハリーのおたんじょう日に、ふたりで金ぴかの王かんをつくったのです。はじめてハサミをつかったハリーは、なかなかじょうずにきることが できずになき出してしまいました。
おかあさんはやさしく手をそえて、きりかたをおしえてあげました。ハリーががんばってつくった 金ぴかの王かんは、それは それは すばらしいものでした。でも、おかあさんにはハリーのうれしそうなかおが、いちばんの金ぴかに見えました。
お母さんとハリーのお誕生日の日の思い出。二人にとって、かけがいのない大切な思い出です。お互いのことを思いやる気持ちが、とても素敵ですね!
さいごにおもい出したのは、ある あきの日のことでした。おかあさんはかった毛を きれいによりあわせて糸をつくりました。その糸でハリーにあたたかいセーターをあんで あげるやくそくをしたのです。ハリーは大よろこびで、セーターができあがる ことをたのしみにまっていました。でも、そのセーターができあがる まえにハリーはいなくなってしまったのです。
この物語をしっかりと読んでみると。実は、ルシファーがひっそりと素敵なことをしてくれていたことに気づきます。ヒントは、雲から降りていくロープの色です。チェックしてみてください!
RAM WIRE 『僕らの手には何もないけど、』Music Video ・「象の背中」の城井文が描くショートアニメ
現在、Youtube上で200万人以上が視聴したミュージックビデオをこちら!MVと絵本を見比べて、絵本を読み聞かせするのもいいですよ。
著者紹介
著 城井 文
1968年生まれ。東京芸術大学美術家修了 ミュージックビデオ・CM・こども番組のアニメーションや絵本など手掛ける。
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著者:城井 文 パイ インターナショナル